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SPECIAL REVIEW
shotahirama
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shotahirama『NICE DOLL TO TALK』ーセカイの音に耳を開くー


shotahirama が自身の作品を「ポップ」と語るとき(1)、私たちはその言葉をパフォーマティブな挑発としてではなく、コンスタティブな宣言として受け止めるべきだろう。

たしかに、この『NICE DOLL TO TALK』に収録された楽曲は、ともすると私たちが慣れ親しんだ音楽形式からは逸脱した不穏な音の連なりのようにも感じられるかもしれない。しかしこのことは、ここには認識可能なパターンは存在せず、認識不能なノイズが無防備に散乱しているということを直ちに意味するわけではない。

例えば、渋谷慶一郎らとともに「第三項音楽」という新たなサウンドアートを提唱する池上高志は、ある論考の中で、こうしたパターン/ノイズを巡る問題系について次のように述べている。


「サウンドには、音楽から自然のサウンドスケープ、人の声までさまざまにある。その違いは何であるのか。できあがったものが完全なホワイトノイズだと、面白くないし、人は飽きてしまうだろう。このノイズに加えられる、動的な要素、空間的な要素が、ノイズをパターンに変換する。 面白きもの、人が飽きずに愛するものに変えていく。つまり、人の感性に訴えるものは、変換の仕方にあるのだ」(2)


認識不能なノイズは、動的/空間的な要素によって、認識可能なパターンへと変換されうる。そして、shotahirama の楽曲が他の音楽家と一線を画するとすれば、こうした変換が、アカデミックな作曲技法にもよらず、数式によって導き出された配列にもよらず、おそらく、彼自身の研ぎ澄まされた聴覚によってのみなされているという点にある。

shotahirama は、あるインタビューの中で、『NICE DOLL TO TALK』に収録された楽曲が12の部分から構成されていることを明かしているが(3)、ここでは、この些か錯綜した楽曲を以下のような大きく8つのパートに分割し、その展開をたどっていくことにしたい。


[intro] (0'00"-0'38")
[cut-up 1] (0'38"-3'07")
[drone 1] (3'07"-5'54")
[cut-up 2] (5'54"-6'43")
[drone 2] (6"31"-8'37")
[cut-up 3] (8'37"-9'43")
[drone 3] (9'43"-13'57")
[outro] (13'57"-14'24")


ここには、[intro] と [outro] に挟み込まれるかたちで、[cut-up] と [drone] のパートが 交互に現れるという構成を見出すことができる。

[intro] における静謐な高揚感。軋み合うノイズの直中からこの楽曲全体を通して幾度となく繰り返し現れる Bm11 と思しき響き (A major の構成音をほぼすべて同時に鳴らしたかのような響き) が、漸次的にその全貌を露にする。その音像はまさにこの楽曲の幕開けに相応しい原初的な混沌からの誕生を連想させる。

[cut-up] における奔放かつ精緻な響きの配置。音素材を伸張/圧縮/切断することによる変容に次ぐ変容に次ぐ変容。この聴覚的な快感原則によってのみ駆動されたかのようなセカイの音たちの奔流はまさに shotahirama の独壇場と言える。そして、[cut-up 1] [cut-up 2] [cut- up 3] のそれぞれのパートの終盤においては、地面を打ちつけるようなインダストリアルノイズ に端を発する鋭い金属音の性急な接近という一連の音の流れが現れ、続く [drone] のパートを導き出す先触れとなっている。

[drone] における無時間的な幸福。[drone 1] においては、[intro] において現れたあの Bm11 (シレ#ファラ#ドミ) の響きを引き継ぎながら、ノイズや環境音が渾然一体となった甘美な停滞が持続する。また、[drone 2] においては、A major から F#major へと短三度下に移調し、A#m11-9 (#ラ#ド#ミ#ソシ#レ) と思しき響きとともに、その緊張の度合いが一段と深められる。そして、[drone 3] においては、F#major の属調である C#major へと移調し、G# (ドミナント) → F# (サブドミナント) → C# (トニック) を基調とした清冽な響きが、これまで濃密に繰り広げられてきた野蛮さと優美さの官能的なせめぎ合いを電子音の海へと解き放つ。同時に、[drone 3] の終盤において、この清冽な響きが、都会の喧騒を思わせる環境音の中へと緩やかに溶解する瞬間に立ち現れる陶然とした美しさは筆舌に尽くし難いものがある。しかし、ここで shotahirama は、この楽曲をこのまま終結させることを選ばず、私たちに対してさらなる逸脱を提示する。

[outro] における再現と切断。[outro] においては、[intro] において現れたあの Bm11 の 響きが不意に再現される。そして次の瞬間、[cut-up] のパートの終盤において繰り返し現れたあの先触れとしてのインダストリアルノイズ/金属音の性急な接近という一連の音の流れが現れたかと思うと、この楽曲は唐突に切断される。切断の直後に広がる静寂。いや、程なくして私たちは、その静寂の中に豊穣なセカイの音たちが溢れていることに気づかされる。つまり、この楽曲の終結部に現れる唐突な切断は、私たちに対してセカイの音に耳を開くことを要請する先触れでもあるのだ。

『NICE DOLL TO TALK』に収録された 1 トラック 14 分程の音の連なりは、私たちの周囲に溢れるセカイの音たちが、私たちの人生をポップに彩る何かへと変換されうることの喜びを、 幾層もの過剰な逸脱を孕みながら密やかに告げている。

y_ymj (Yuta Yamaji)

(1)『逸脱からの受容・オルタナティブアクセプト』久保正樹
(2) 池上高志「Living Technology」、『思想地図β』vol.1所収。
(3)『コンセプトとなりうる考えも含め、すべて排除した無の姿勢で臨みたかった』3055.jp


CD RELEASES
Homage

『Homage』
Yu Miyashita

2015年9月20日発売: CD/ALBUM
価格 1600円(+税)




post punk

『Stiff Kittens』
shotahirama

2015年2月22日発売: CD/ALBUM
価格 2000円(+税)




post punk

『post punk』SOLD OUT
shotahirama

2014年1月23日発売: CD/ALBUM
価格 1600円(+税)





OTHER CD RELEASES
surf

『Surf』
shotahirama

2015年1月29日発売: 4CD/BOX
価格 3900円(+税)
レーベル: shrine.jp





BIOGRAPHY
shotahirama

ニューヨーク出身の音楽家、shotahirama(平間翔太)。中原昌也、evala、Ametsubといった音楽家がコメントを寄せる。畠中実(ICC主任学芸員)による記事「デジタルのダダイスト、パンク以後の電子音楽」をはじめ、VICEマガジンや音楽ライターの三田格などによって多くのメディアで紹介される。Oval、Kangding Ray、Mark Fell等のジャパンツアーに出演。代表作にCDアルバム『post punk』や4枚組CDボックス『Surf』などがある。


shotahirama is a Tokyo and New York-based electronic musician working with sine waves, white noise, and other primitive signals as source material for his compositions. In 2010 shotahirama founded SIGNAL DADA label. Received universal acclaim from both mainstream and independent publications, including VICE Magazine, Sound&Recording Magazine, Art World Magazine and more. Also he toured around the world, featuring dates in England, Hong Kong and Japan staging for Oval, Kangding Ray, Mark Fell and more.





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